リョービの最高傑作を味わうんだぜ

大盛貝塚

2020年10月21日 11:13

このブログで閲覧数の多い記事はラパラ関連の投稿だったのですが、マチュリティを紹介して以来、リョービの釣具を検索している方からの流入が増えました。

確かにリョービは情報が少ない。
今ほどネット社会になる前に釣具事業から撤退したせいもあるだろう。もう20年も前のことになる。リョービとしては釣具事業を上州屋に売却し、ブランドとしては生き残っているのだが、往時を知るアングラーとしては、やはり別物であるという意識がある。

そのリョービの最後の作品であり、最高傑作との評価も多いリールが今回ご紹介するバリウスだ。

販売当時のラインナップとしては遠心ブレーキのF200と300、マグネットブレーキのM200と300の計4種。中でもやはり、当時(多分)唯一の外部調整可能な遠心ブレーキであるフライングアームブレーキを搭載したFシリーズが個性的だし人気もあった。今でも然り。
僕もずっと出物を探していたのだけど、ようやく美品を入手することができた。中高生だったときの憧れのバリウスがようやく手の中に。いやっほう。



僕のバリウスはF300。本当はF200がベストだったけど、終売後はや20年、美品に出会える保証はない。それにPEラインで下糸を巻けば実用の範囲では十分軽いものも投げられると踏んで決断。

今ではアブのアンバサダーくらいしかない、シンメトリーなタイプの丸型リール。
リールの歴史上、屈指の美しさだと思うのは贔屓目が過ぎるか。過ぎますね。

フルメタルなボディ。フレームはもちろん、サイドプレートは驚異のチタン製。軽量高強度のこの金属、戦車に使われます。

レベルワインダーはSicリングで抜かりなし。
スプールとの距離が近いと言う人もいるかもしれないけど、僕は気にしたことありません。



スプールはシャフトレス。今のフィネス系リールのはしり。
虎の子のフライングアームブレーキは、今見れば現代の遠心ブレーキと仕組みは変わらない。シマノのSVS∞ってほぼこれじゃね...?



ピニオン付近も心なしか空間部分が少ない気が。
耐久性を考えてのことなのか気のせいか笑



内部構造は意外とシンプル。
しかし、例えばクラッチのスプリングの先端にCリングを付けて飛ばないようにするところなんか、独特の気遣いがみられる。
この個体、グリスの感じからして今まで分解されたことがなかったのかもしれない。



そういえば露出しているネジはすべてマイナスネジ。
マイナスネジは、なめやすい反面、泥やゴミがネジ穴に入り込んでもすぐに取りやすい。そのため汚れやすい箇所に使われることが多い...多かったそうだ。今のリールはそもそもプラスでもマイナスでもない、星形のトルクスネジが増えて、メンテしにくいったらありゃしない。

僕自身の組み立ての精度にとても自信がないので、必要以上の分解はせず、古いグリスの拭き取りと新しいグリスの塗り付けだけで、そっ閉じ。



クラッチも金属製。イクシオーネ同様、リョービ末期のオリジナルのロングビルクラッチ。
ハンドルを回さずクラッチの操作だけで切ったり繋げたりできるというもの。
意図せずキャスト中に繋いでしまってピニオンを殺してしまうという人もいるようだけど、僕はこのシステムが好きだ。
僕のような、ベイト右投げ右巻き派にとっては、このギミックでピッチングの時、キャスト→(ルアーを沈めるため)カウントダウン→着底→アクション→バイト→フックアップがすべて右手で行えるのだ。
まあ左巻きを使えば全然いいんだけど、当時は左巻きリールって少なかったのだ。このバリウスも右巻きのみのラインナップだった。まだベイトは利き手で巻くものというのが常識だった時代。
僕もその時代のアングラーなので、未だにベイトは右巻きでないと落ち着かない。





イクシオーネもそうなのだけど、弱点なのはハンドルノブ。
キャップがネジ止めされているのだが、このネジ穴が割れてしまうのだ。
大事に扱わないと...。
あとなぜかハンドルを留めるのがネジ。理由は不明笑

重量は、現代では驚異の、公称270g。最新鋭のベイトフィネスリールの2倍分とクソ重い笑
しかし実際にロッドに装着すると、この重さのお陰で重心がちょうど手のひらに来て、存外にアクションさせやすいのだ。
軽さは性能ではある。しかし、車重の重い車の方が実は乗り心地が良かったりするように、全てはバランスの問題でもある。

ちなみに昔の設計なので、PEを巻くとなぜかエッジに片寄る性質がある。
ただスピニングと違ってそれがライントラブルには繋がらないので問題ない。気持ちの問題。

実用性はというと。
川スモール用に、PE2号+ナイロンリーダー10メートルというセッティングで、Dコンタクト63(7g)を投げたところ、低弾道でばひゅんと飛ぶ。そして遠心ブレーキの利点、最後の伸びがあり気持ちいい。
力むと軽くバックラッシュはあり、確かに現代のマグブレーキのリールよりはピーキーだと思うけど、これは慣れで対応できる程度の問題。
渓流ベイトフィネスは無理でも、バス釣りなら今でも十分通用する性能だろう。
これを20年前に作り上げたリョービには感嘆する。

往時は、広島市民球場のホームベース裏、プロ野球中継で一番露出する、キャッチャーの背後に広告が打ってあったのだ。
「RYOBI バリウス ベイトリール」
それが中学生だった僕には、当時広島カープにいた金本の打席よりも気になっていた。

リョービは釣具業界から撤退し、金本もとっくに引退したけど、このリールは今でも僕を少年の心のままワクワクさせてくれる。
時代の記憶とは、かくも重いものである。

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